マリー:♀元気で明るい女の子。
アンシー:♀マリーの友達。大人しく見えるけどマリーに負けず行動派。
ニーナ:♀不思議な女の子。元優等生。
魔法学園 8話
マリー:「アンシー、どれが本当だと思う?」
アンシー:「色々な人に聞いてみたけれど
皆さん言う事が違ってたものね」
マリー:「隠れて魔法使いとして動いてた!とか、隠し子が!とか……」
アンシー:「結局、噂はただの噂なのかしら」
マリー:「じゃあ、ニーナちゃんはどうして自分のことを人殺しだなんて言うんだろう」
アンシー:「友達、恋人─どんな関係だったのかはわからないけれどオリガさんって人が関係しているのは確かなんじゃないかしら」
マリー:「この写真くれた人はすっごい仲良しだったって言ってたよね。
でも、転校しちゃったんでしょう?」
アンシー:「そう言っていた人もいたけれど……」
マリー:「うーーん……よし!」
アンシー:「何か思いついたの?」
マリー:「とりあえず、そのオリガさんの事を聞いてみようと思って!
いきなりあれこれ聞くのは、ちょっとあれだけど
多分、友達とかだったんなら聞いても大丈夫かなって」
アンシー:「そうね、話してくれるといいけれど…」
マリー:「だって聞かないと何がどうなのかもわからないし、
ニーナちゃんはオリガさんがいなくなって寂しいのかもしれないし…
私だって、アンシーがいなくなっちゃったらすごく寂しいから」
アンシー:「ええ、そうね。私も寂しいわ」
マリー:「ニーナちゃんのことはこのままお部屋で待ってれば帰ってくるだろうし」
SE:ガチャ
アンシー:「噂をすれば、ってやつね」
マリー:「と、いうことで!」
ニーナ:「なにが『ということ』なんだ」
アンシー:「まあまあ。
あ、おかえりなさいニーナさん」
ニーナ:「ああ」
マリー:「えーっと、何から言えばいいのかな……
あのね、私とアンシーでニーナちゃんの事を、色んな人に聞いたの」
ニーナ:「……なんで」
マリー:「ニーナちゃんの事もっと知りたくて
もっと仲良くなりたくて。
勝手に色々聞いちゃってごめんなさい」
アンシー:「私も、ごめんなさい」
ニーナ:「……そんなの、どうでもいいよ
謝られても困る」
マリー:「それでね、この写真なんだけど……
写ってるのオリガさんとニーナちゃんだよね?」
ニーナ:「っ!それ、どこで……」
アンシー:「3年生の、お名前は聞き忘れてしまってわからないのだけど
ニーナさんとオリガさんの事を知ってるという人から貰ったのよ」
ニーナ:「オーリャ……」
マリー:「あ、えっと、貰ったものだけど、ニーナちゃんにあげるね」
ニーナ:「……ありがとう。
そうか、写真……ははっ、全然思い浮かばなかった……」
アンシー:「ニーナさん……その、オリガさんはニーナさんにとって大切な人だったの?」
ニーナ:「ああ」
マリー:「お友達?えっと、恋人だっていう人もいたんだけど…」
ニーナ:「どうだろう。友達とも、恋人ともちょっと違うかもしれないな。
確かなのはアタシ達は愛し合ってたって事だ……」
マリー:「愛してるのに、恋人じゃないの?
女の子同士だから?」
ニーナ:「いいや、性別は関係ないよ。
オーリャも、アタシも……関係に拘らなかった。それだけ」
アンシー:「とても素敵な方なんでしょうね」
ニーナ:「ああ。オーリャのような人とはもう2度と出会う事はないな。
アタシは一生分の運をオーリャとの出会いで使ったから」
マリー:「わっ!に、ニーナちゃん?!」
ニーナ:「よく、こうやって抱きしめたり、抱き合ったりしてた……もうどこにもいないと思ってたのに、こんな風にオーリャに会えるなんて……」
マリー:「えっと、オリガさんは遠くに行っちゃったの?転校?それともなにか事情が─」
ニーナ:「……やっぱりその事も、聞いたのか」
マリー:「うん……」
アンシー:「話すのが辛いなら無理には聞かないわよ
こんな形でニーナさんの事やニーナさんの大切な人の事を聞いておいて今更だけれど……」
ニーナ:「いいよ、全部話す。この写真のお礼、って言いたいけど
どうせ、似たような事はもう聞いてるだろうから」
マリー:「あの、ニーナちゃん」
ニーナ:「消灯時間が過ぎたら、広場の噴水の近くにある花畑までおいで。
そこで、全部話すから」
________
マリー:「こんな所入れたんだねぇ」
アンシー:「広場に居ても、こちらまで来ることはなかったものね」
マリー:「あ、ニーナちゃんだ」
アンシー:「待たせちゃったかしら」
ニーナ:「いや、ここに来たのはついさっきだよ。
久しぶり、って感じがするな」
マリー:「前はよく来てたの?」
ニーナ「今日みたいに、こっそりオーリャと抜け出して、ね」
アンシー:「ロマンチックね」
ニーナ:「……アタシが人殺しだっていうのは覚えるか?
他の奴らからも聞いただろう」
マリー:「うん、でもみんな言ってることがちょっとバラバラだったり突拍子もないことを言う人もいたよ」
ニーナ:「それは多分マニアットのせいだ。
あとは、アタシが暴れたせいかな。
武器召喚及び使用で謹慎、とかそんなもんになってたんだろうけど
アタシは、オーリャを殺した。
助けることも救うこともできなかった」
マリー:「どういう事……?」
ニーナ:「オーリャはね、アタシにたくさんのものを与えてくれた。
アタシは、オーリャの事を知らないまま浮かれて……オーリャは、魔族と人のあわいにいたんだ」
アンシー:「魔族とって……それは、魔族と交わった人の子という事?」
ニーナ:「それは表向きの話だろうな。
まだ確証は得てないから断言はできないけど
アタシ達と同じく魔力を持って生まれてくるように、魔族として生まれる奴もいる」
マリー:「そ、それって……魔族は元々私達と同じ人だって……」
ニーナ:「全てではないが、そういう奴らもいるだろうな」
アンシー:「そんなっ」
ニーナ:「……少なくとも、オーリャはそういった事を言っていたし、そうだった。
少し調べてみれば、裏付けるようなものもある」
マリー:「じゃあ、ニーナちゃんは……」
ニーナ:「“魔法使いのように、魔族を倒した”」
マリー:「……そんな、そんな事って…」
ニーナ:「2人とも、泣かせてごめん。
知らずにいた方がいい事だったろう
魔族になっても、アタシにとってオーリャだってことは変わらない。
……魔法使いを目指してるアンタ達には、ここまで話すことはなかったのかもしれないけど
アタシは、断罪を待っていたんだ。きっと。
オーリャを、殺したアタシを罰して欲しかったんだ」
マリー:「ニーナちゃんは、ずっと、……魘されて、苦しんでたのも、……ぜんぶ……」
ニーナ:「それが、アタシが背負うべきものだと思ってる」
アンシー:「……私は、罪とか、許される、許されないということは、わからないわ……でも、話してくれてありがとう」
ニーナ:「……まさか、誰かにこうやって抱きしめられるとは思わなかったよ」
マリーN:少しだけぎこちないニーナちゃんの優しい手に撫でられるともっと胸が苦しくなって、涙は止まらなくて
それでもニーナちゃんは私達が泣き止むまで背中を撫でてくれた。
続く