「初心者の私が

          MMOを始めた

              理由があるんです!」

作者 [ 白月 ナギ ]

 

 

第二話  お供キャラなんて初耳です!

 

神崎鈴音(かんざきすずね)16歳 ♀

高校2年生の女の子 160㎝   

肩までの茶色のショートカットに茶色の瞳。

 

ルイ 年齢不明 ♂

140㎝   黒い毛並みに青い瞳の二足歩行の黒猫。

MMOの中のお助けお供キャラ。

 

N:性別不問

 

 

 

N:ファンタジー アース オンライン 

      ウィグルド草原にて

 

ルイ「今だ、やれ!」 

 

鈴音「風の聖霊よ、敵を切り裂け!ウインドカッター!」

 

N:風の刃がスライムを襲い、スライムは光の粒になって消えてしまった。

 

鈴音「やった!今度は一撃で倒せましたよ、ルイさん!」

 

ルイ「こんな雑魚一匹片づけたくらいでわめくな。あと、さんはいらん。ルイでいい。

          もしくは、ルイ様!この二択しか受け付けん。」

 

鈴音「・・・ルイと呼ばせていただきます。」

 

ルイ「それでいい。」

 

鈴音(なぜにこの猫さんはこんなにも偉そうにふんぞり返ってるんでしょう・・・。

   まあ、初めて会った時から偉そうでしたが・・・。)

 

N:そんなことを思いながら鈴音は二日前の出来事を思い返していた。

  二日前・・・

 

鈴音「ね、ねねね、猫がしゃべってますー!?」

 

N:そう、それは猫だった。腰にナイフを装備して茶色のブーツを履く二足歩行で動く、

       体長140㎝くらいの青い瞳の黒い猫。

 

ルイ「お供キャラが無言だったら、サポートできねえだろうが!」

 

鈴音「お供キャラ?」

 

ルイ「見りゃわかんだろ!おれはニャント族のルイ、お前のお供キャラだ。」

 

鈴音「ニャント族?」

 

ルイ「お前、初期設定の時に、お供キャラつけますか?って聞かれて、はいって言っただろ!

           でなきゃ、おれは今ここにいねえんだよ!」

 

鈴音「初期設定・・・?あの・・・私、言いましたか?」

 

ルイ「ああん?」

 

鈴音「は、はい!言いました!」

 

鈴音(正直、覚えてないですよー!)

 

ルイ「まったく、こんなのがおれの主人だなんて、最悪だな!」

 

鈴音「主人?」

 

ルイ「お・ま・え・は!ちゃんとチュートリアルの説明聞いてねえのかよ!」

 

鈴音「は、はい!ごめんなさい!聞いてないです!」

 

ルイ「・・・はぁ、もういい。いいか、一度しか言わないからよく聞け!

   このファンタジー アース オンラインの世界はたくさんのステージ、モンスターがいる。

          それに最初から一人で立ち向かうのは、MMOゲームをやりこんでる上級者ぐらいのレベルでないと難しい。

   ましてや、お前みたいなゲーム初心者のペーペーが単独で?はっ、冗談もいいとこだな。」

 

鈴音「は、はい、すみません!」

 

鈴音(あれ?私ゲーム初心者って言いましたか?)

 

ルイ「で、だ!そんな時こそ、このおれ!お供キャラという名のサポートキャラの出番だ!

   この世界についてあらゆる知識をわかりやすく説明してやるし、戦闘もサポートしてやる。

   まさに、お前にとっての救世主だ!だろ?」

 

鈴音「あ、はい・・そうですね・・・。」

 

ルイ「まあ、お供キャラには使用料がかかるが、トータルを考えると安いもんだぜ」

 

鈴音「・・・はい?今、なんて言いました?使用料!?あなた、お金とるんですか!?」

 

ルイ「当たり前だろ!おれみたいなとびっきり有能なお供キャラ、タダで使えるわけないだろうが!」

 

鈴音「ちょっと待ってください!そんなの聞いてませんよ!有料だなんて!キャンセルさせてください!」

 

ルイ「は?きゃんせるう?バカかお前、そんなのできるわけないだろ!

   だから、設定の時に再確認したはずだぞ?本当につけるのか?って。」

 

鈴音「・・・そういえば何かを確認されたような気が・・・」

 

ルイ「だろ?」

 

鈴音「そんな・・・本当にキャンセルできないんですか?」

 

ルイ「・・・。」

 

鈴音「ほんとーに、ほんとーに、無理なんですかー?」

 

ルイ「・・・まあ、まだ始まりの街に着いてないし、できなくはないが・・・・。」

 

鈴音「ほんとですか!どうやるんですか?」

 

ルイ「・・・一度強制終了でログアウトして、再度ログインするときに、今までのデータを

          引き継ぐか聞いてくるから、それをいいえと選択すればいい。

   それで、今のお前のキャラクターデータも消えて最初から作り直しになる。」

 

鈴音「なんですか、簡単じゃないですか!よかったですー。」

 

ルイ「そう、簡単なんだよ。所詮はデータ、消える時は簡単にあっという間だ。

   そうやって、おれというお供キャラも消える。」

 

鈴音「え?ルイさ・・ルイが、消えるんですか?」

 

ルイ「当然だろ?おれは今のお前のキャラにつけられたお供キャラだ。

   今のお前(データ)が消えるなら、おれ(その付属データ)も一緒に消える。

   そして、新しいお前には、また別の新しいお供キャラが付くんだよ。」

 

鈴音「・・・そんな。あの、私ちゃんと指名しますよ!ルイがいいですって!」

 

ルイ「おれはホストじゃねえよっ!」

 

鈴音「え、でも、ほんとにちゃんと・・私・・・」

 

ルイ「・・・無理なんだって。消去さえれたおれ(データ)が復元するなんてありえないんだよ。

   だから、お前がログアウトするって言うなら、ここでサヨナラだ。」

 

鈴音「・・・・・・・。」

 

N:考え抜いた末、鈴音が出した決断は・・・

 

鈴音(・・・ホストに貢ぐ女性とは、こんな気持ちなのでしょうか)

 

N:二日前の出来事を振り返りながら、鈴音は遠い目をした。

 

ルイ「で?今何Gぐらい貯まった?」

 

鈴音「へ?えっと、ステータス、オープン!」

 

N:我に返った鈴音の前に光の文字が浮かび上がる。

  そこには文字通り、鈴音のステータスと現在の所持金が書かれていた。

 

鈴音「2000Gですね。」

 

ルイ「よし!それだけあればアレが買えるな。始まりの街に戻るぞ!」

 

鈴音「あっ、待ってくださいよー!」

 

N:どちらがお供なのかわからないまま、二人はウィグルド草原から始まりの街へと歩き出した。